無題

昼過ぎに、家族でSちゃん宅に行って来た。Sちゃんのお父さん、お母さん、おばあさんがおだやかな笑顔で出迎えてくれた。「お葬式と結婚式を一緒にしたのよ」というSちゃんのお母さんの言葉どおり、祭壇に菊はひとつもなく、胡蝶蘭やスイトピーなどピンクや白、黄色といった色鮮やかなお花がたくさん並んでいた。浴衣を着た写真のSちゃんが、花の真ん中で微笑んでいた。今日は泣かない、と決めていたけれど、Sちゃんのお母さんが私の膝に手を置いて言った「○○ちゃん(私の名前)、Sちゃん死んじゃったよ…」という言葉を聞いて、少しだけ涙をこぼしてしまった。でも、悲しむことだけが故人を偲ぶことではない。Sちゃんのご家族と一緒に、私やSちゃんの小さい頃のエピソードをたくさんたくさん話した。ウェディングドレスを着て安らかに眠っているSちゃんの写真も見せてもらった。「ウェディングドレスの中は晴れ着を着ているのよ。全部着せてあげようと思って。」とSちゃんのお母さんは恥ずかしそうに小さく笑った。