ミス・サイゴン

キャスト表
やっと書ける時間がとれたー。舞台を観ていない人にはなんのこっちゃという日記になりそうだけど、記憶が薄くならないうちに書いておこう。


2日前の19日(夜の部)、実家の母と帝国劇場でミス・サイゴンを観てきた。当日のキャストは、エンジニア:市村正親、キム:松たか子、クリス:坂元健児、ジョン:今井清隆、エレン:高橋由美子、トゥイ:tekken、ジジ:高島みほ、タム:畠山紫音・・・という豪華メンバー。私が中学生の時に同じく帝国劇場で初演があり、観たい!と思ったものの、結局チケットを取らずに終わってしまいすごく後悔した。今回日本での再演を知り、やっと手に入れた12年目のミス・サイゴンだった。


このミュージカルのプリンシパル・キャストは1つの役に3〜4人があたっている。誰が出ている回を選ぶかですごく悩んだけれど、結局上記のメンバーが一番観たいと思い、この日を選んだ。市村正親さんは数年前に三谷幸喜作・演出の『You Are The Top〜今宵の君』(市村さんと鹿賀丈史さんが二十数年ぶりの競演!という話題の作だったのに、鹿賀さんが急性虫垂炎で降板してしまった舞台)で好きになり、松たか子さんは同じく三谷幸喜作・演出のミュージカル『オケピ!』(初演)で観たときに意外と良かった(失礼!でも、期待していなかった分、印象深かった)ので迷うことはなかったのだが、クリス役の坂元健児さんと石井一孝さんでどちらにするかすごく迷った結果、ライオンキングでの評判が良かった坂元さんの出演する回を選ぶことにした。

  • 以下、少し舞台のネタバレを含みますので、これから観る方は気をつけてください

少し早めに母と新宿で落ち合い、高野フルーツパーラーでお茶した後、雨の中帝国劇場へ。会場は予想通り8割方が女性。公演パンフレットを買い、待ちに待った開演の時間まで、ずっとドキドキしていた。


・・・12年来観たかった舞台は、期待を裏切らないものだった。のっけから圧倒する歌と演技で一瞬にして鳥肌がたち、すぐに舞台に夢中になった。物語における会話は、ほぼ全て歌で進む形式。演技をしながら(時には横たわった体勢からでも)歌い続けられる歌唱力は本当にすごいと思う。また、舞台装置は、陥落直前のサイゴンの猥雑なキャバレー、キムとクリスが一夜を過ごす宿、サイゴン陥落・・・と、広くはないが奥行きのある舞台でめまぐるしく変わり、息をつくヒマもない。ストーリーはミス・サイゴンのwebページに載っているのでここで詳しくは書かないけれど、クリスの残した子どもであるタムの演技がすごく健気で、また母親としてのキムの気持ちが松たか子さんの歌で伝わってきて、ぼろぼろと泣いてしまうシーンがたくさんあった。(ただ1幕の演出でちょっと気になったのはアメリカにいるエレン&クリスとサイゴンのキムとの対比。2段ベッドにしかみえないので、「上方(上位)にあるアメリカにいるエレン&クリスと下方(下位)のベトナムにいるキム」、という暗喩が分かりづらかった。)


2幕の最初では、クリスの戦友であるジョン(今井清隆さん、声がものすごくステキでした)が、ベトナムに残された米軍関係者の子どもたちの映ったスライドを見せながら、「まだ戦争は終わっていない。この子は私たちの子どもである」と演説するシーンから始まる。このミュージカルはロンドンで初演の後、すぐにアメリカのブロードウェイでも演じられているけれど、ベトナム戦争アメリカの残したものをこのように直視したミュージカルは、どのような想いを観た人々に抱かせたのだろうか。その後、舞台はサイゴン陥落の日に時間をさかのぼる。実物大の4tヘリコプターでアメリカに帰らざるを得ないクリスと泣き叫ぶ群集にまぎれてしまい大使館の中に入れないキムが引き裂かれるシーンも、やはり泣けてしまう。ストーリはわかっているのに・・・。その後はもう市村正親の独壇場。豊かな演技力に、ろうろうと歌い上げる歌唱力。ほかの人が演じるエンジニアを観ていないが、これは本当に市村さんのハマり役なんだと思う。最後、キムがタムの将来を想い・・・のシーンで、また涙がとまらなくなった。今思い出しても泣きそうになる。


アンコールは何回だったっけ。たしか5回以上はあったと思う。最後は、ほぼ全員総立ちで拍手をして閉幕。この舞台は、「オケピ!」の初演を見たとき以来の衝撃。一生忘れられない。